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活動内容
医学部における女学生の割合、女性医師の割合は年々増えています。
医師として働く上で、男女の違いは関係ないと言いたいところですが、人それぞれで、女性ならではの悩みを抱えている医師や女性ならではの苦労をしている 医師も少ないとは言えません。現在医療の第一線で働いている多くの女性医師もそれぞれに悩んだり苦労をされてきたに違いありません。
私は平成12年卒で、いろいろな科を研修したのちに放射線治療科に入局しました。最近、学会で「女性放射線治療医の活躍を求めて」という題材でのパネル ディスカッションに参加させてもらう機会があり、その際に自分の同級生の女性医師たちが現在どのような状況下にあるのか久しぶりに連絡をとりながら、調べ てみました。
問題点としては、保育施設の不足、病後時保育のないこと、幼稚園・小学校時期の子どもの帰宅時間が早いこと、核家族化に伴う家族のサポートの不足、パート ナーの転勤、パートナーの理解が得られない、体力的につらいなどがあげられました。子どものいない同級生の女性医師は、全員常勤医として働いており、やは り、常勤医をやめる理由の多くは出産、育児でした。
しかし、最初はみな常勤医として働き続けたいという希望があったようです。今はまだ充分とはいえませんが、現在、さまざまなサポート体制が各施設で考え られています。女性医師の増加と共に、少しずつ体制も変わってすべての女性医師が働きやすい環境になればと思います。そして、女性医師が働き続ける上で、 同性のロールモデルとなる女性医師の存在やメンター(良い助言者)の存在もとても重要だと考えます。同性のロールモデルの存在は、自身の目標や指針を見つ けやすくします。また悩んだり困った時に、相談できるメンターを見つけることで精神的にも心強くなります。しかしながら、あまり人数の多くない女性放射線 腫瘍医にとって、なかなかメンターやロールモデルに出会える機会は少ないと思います。
この女性放射線腫瘍医の会を通じて、若手女性医師たちが良きメンターやロールモデルに出会え、医師としてのより素晴らしい未来につながることを心から望 みます。
放射線診療は女性医師が実力を発揮できる領域(385KB)
「放射線治療の先生はね。私がもうすぐ歩けるようになるって本気で信じてるの。」
脊椎転移による脊髄圧迫のため、両方の足が動かなくなってしまい、ある日突然、歩行どころか、立つこともできなくなった患者さんが、照射開始1週間後に担当の先生に伝えた言葉である。
癌は、この転移を契機に発見された。そういう事情もあり、症状が出現してから診断が付き、放射線治療施設のある当院を受診するまでにかなりの日数が経過してしまった。当院に転院となったその日に、緊急対応で放射線治療が開始された。完全に歩行不能になってから16日が経過していた。
教科書などには、こういうタイプの下肢の麻痺症状は、ゴールデンタイムを過ぎると治療が困難になると書いてある。ゴールデンタイムは、症状が出現してから72時間以内。患者が来院したのは、72時間どころか、症状出現からすでに16日が経過した時点である。本人も含め、彼女が再び自分の足で歩けるようなるなどと考えているものは誰ひとりいなかった。『放射線治療の先生』を除いて。
ところが開始から2週間が経過した放射線治療の最終日、彼女は、ふらつきながらも車いすから立ってみせてくれた。「この調子でリハビリをがんばって、1日も早く歩けるようになりたいです」という言葉を残し、当院初診時とはまるで別人のような笑顔で、もとの病院に転院された。
放射線治療は非常に魅力的な分野である。
様々なすばらしさがあるが、なんといっても、以下の二つは魅力的である。
1.がんを根治できる
2.患者さんを、がんが引き起こした苦しみから救うことができる
男性の2人に1人、女性の3人に1人ががんになる時代。日本人の死亡原因第1位は1981年より、一貫として悪性新生物であり、現状では、全死亡の半分近くが悪性新生物を原因としている。
とかく、放射線治療は、治療法がなくなった患者さんに対する気休めの治療と誤解されがちだが、それは大きな間違いである。実際は、胃癌など一部のがんを除けば、早期がんでは手術と同等、進行した癌においては、手術より高い治療効果を望める治療法である。
しかも、身体にメスを入れて、臓器を取り出すわけではないので、治療により患者がうける合併症は、手術に比較して小さく済むことが多い。
この魅力に魅せられ、米国、フランス、イタリア、ドイツ、オーストラリア、韓国など多くの先進諸国では、放射線治療は非常に人気の高い診療科である。特に米国では人気が高く、学生時代の成績がかなり優秀でないと放射線治療医にはなれないということが、医療分野のみならず、一般にも広く知られている状態である。
放射線科は女性に向いている診療科である。こんなことを私が言い出すと、「遠隔読影とかもできますからね」と、誤解する人が多い(そっちの放射線科ではない)。
放射線治療が女性に向いている診療科と私が考えるのは、女性である方ががん患者さんの対応に有利だと思うからである。
女性の脳は、脳梁が太く、生物学的に、他人とのコミュニケーションに有利な構造である。そういうこともあり、相手の言動や表情から、気持ち(本心)を探ったりするのが得意な人が、女性には多い。また、同じことを言っても、男性より体が小さく、声が高いため、女性の方がソフトに伝わるという利点もある。さらに、好むと好まざるに関わらず、女性の方が、仕事以外のところで、しがらみにはまるリスクが高いのも事実である。しかし、こういう煩わしいしがらみを通して、実は人間関係の訓練を無理矢理積まされているという利点もある。
実際、ヨーロッパやアジアには、放射線治療医の半分以上が女性という国が多い。しかし、日本の現状は、放射線診断には女性が多くても、放射線治療は、依然女性の少ない診療科である。
また、よく受ける質問に、被曝の問題がある。放射線治療には、非常に高い線量が使用されるため、医師の被曝も相当多いのではないかという懸念である。
放射線治療は、小線源治療(特殊な施設が必要なため、行える施設は限定されている)を除き、医師が仕事中に被曝をするような治療は、あまりない。
放射線治療の面白みは、医学部の授業だけでは中々伝わらない。実際、私も学生時代に授業を聞いていて、かけらの魅力も感じなかった。だからこそ、これから進路を決定される方、是非、一度、放射線治療の現場に見学にいらっしゃることをお勧めする。
当院はもちろん、JAWROメンバーが勤務している施設は喜んで見学を受け入れてくれるだろう。
放射線治療は、非常に魅力的ですばらしい診療科である。しかも、『女性でもできる』診療科ではなく、『女性だからこそ有利な』診療科なのである。